3.Kuala Lumpur & Singapore -In Between-
マレーシアとシンガポールは、かつてひとつの国だった。
発展を続けるクアラルンプール。
そして、アジアの経済の中心のひとつであるシンガポール。
異なるかたちで成長を遂げたこの二つの都市に、偶然、同時に滞在する機会が訪れた。
当初は、クアラルンプールで撮影し、シンガポールで表彰式に出席する予定だった。
しかし出発直前、このプロジェクトのためにスケジュールを組み直し、2023年3月中旬、二つの都市で撮影を行った。
今回、目を向けたのはウェットマーケット。
都市の表層ではなく、その奥にある日常の温度に触れたいと思った。
早朝から、市場で働く人々の時間を追っていく。
クアラルンプールの市場は、活気に満ちている。
中心地から電車で移動し、駅から少し歩くと、そこには観光とは無縁の、生活そのものの風景が広がっていた。
バイクの音、湿った空気、混ざり合う匂い。
肉や魚は常温のまま並び、乾燥を防ぐために水がかけられる。
その環境の中で、人々は当たり前のように働き、こちらのカメラにも自然に応じてくれた。
その距離の近さと、空気の濃さが印象に残っている。
その後、シンガポールへ向かった。
同じくウェットマーケットを訪れる。
そこには、まったく異なる光景があった。
市場は徹底して管理され、野菜は個包装され、肉や魚は冷蔵ショーケースに整然と並べられている。
清潔で、秩序があり、都市のシステムがそのまま表れているようだった。
それでも、働く人々の表情は変わらない。
カメラを向けると、自然に応じ、短い時間の中で、いくつもの関係が立ち上がっていく。
生活のかたちは大きく異なっていても、そこにある人の気配や、働くことのリズムは、どこか似ている。
二つの都市のあいだで見えたものは、違いだけではなかった。
そのあいだにあるもの。
言葉にしきれない、わずかな共通点。
このシリーズは、そうした「間」に生まれるものを捉えようとした記録である。
撮影に応じてくださったすべての方々に、心から感謝したい。





