4.Paris -And Beyond-
パリを訪れるのは、何年ぶりだろう。
前に来たときも、同じ季節だった気がする。
6月のパリは、日差しが強い。
そして、思っている以上に暑い。
2023年6月。
空港から市内へ向かうバスの中で、サングラスを忘れたことに気づいた。
まぶしさの中で、この街に入っていったことを、よく覚えている。
ホテルに荷物を置き、すぐにカメラを持って外に出る。
パリは、決してきれいな街ではない。
通りにはゴミが落ち、スリも多い。
デモも、この街では特別なことではない。
観光地として思い描かれる姿と、実際の街の表情には、確かな差がある。
それでも、この街には惹きつけられる何かがある。
整っていないもの、混ざり合ったもの、その中に、人の気配が濃く残っている。
歩き続けるうちに、視線や距離、沈黙の中に、わずかな変化が生まれていく。
カメラを向けるたびに、その人と自分とのあいだに、ひとつの関係が立ち上がる。
それは一瞬で消えてしまうものかもしれないが、確かにそこに存在していた。
2024年、撮影の最終日、ひとりの男性と出会った。
「今は、日本でもパリと同じものが手に入るだろう。 フランスのブランドも、世界中にある。
でもね、ここで何かをすること、食べること、買うことは、それ以上の“経験”なんだ。」
「経験することは、とても大切だ。そして、パリでの経験は特別なんだよ。」
そう言って、彼は笑った。
Now, you have a gift from Paris.
パリは、何かを与えてくる街だ。
それは形のあるものではなく、記憶や、感覚や、言葉にならない何かとして残っていく。
この街で出会った人々、交わした時間、そしてファインダーの向こうに立ち上がった気配。
その一つひとつが、時間の中で少しずつ変化しながら、今も残り続けている。
それらすべてが、静かに「パリからの贈り物」として残っていくのかもしれない。









